214.レーエンデ国物語/多崎礼
革命の話をしよう。
歴史のうねりの中に生まれ、信念のために戦った者達の
夢を描き、未来を信じて死んでいった者達の
革命の話をしよう。(p.10)
彼もまた、ヘクトルがこの地にやってきた理由、そしてユリアとの邂逅によって、自身がこれから進んでいくべき道を見いだしていく。
また、何よりも魅力的だったのは、本当に物語の世界に迷いこんだのではないかと錯覚するほど、繊細に描かれるレーエンデの森の情景描写。
空高くそびえ立つ古代樹、木の桐を根城にするウル族たちの生活を彩る森の食材、そして、様々な色の緑が散りばめられた木々と、その地でたおやかに育つ植物たち。
実際には存在しないはずの幻想が、ひとたび目を瞑ると目の前に現れる。
それほど『レーエンデ国物語』という作品には、読者を惹きつけて離さない、醸成された世界観があった。
さらに驚くべきことに、この一冊は、これから続く「レーエンデ」をめぐる壮大な物語のほんの序章にすぎない。続きを読むのが楽しみだ。
では次回。