カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「レーエンデ国物語/多崎礼」の感想と紹介

214.レーエンデ国物語/多崎礼

 

革命の話をしよう。
歴史のうねりの中に生まれ、信念のために戦った者達の
夢を描き、未来を信じて死んでいった者達の
革命の話をしよう。(p.10)

 

呪われた土地と呼ばれるレーエンデを舞台に、国を飛びだした少女が、魅惑の地で出会う様々な出来事を経て、自ら選択した道に向かって歩み始める、多崎礼ファンタジー小説
 
ここまで世界観に埋没しながら、ひと時も心休まることなく、最後まで登場人物たちとともに駆けぬけた物語はいつ以来だろうか。
 
主人公である貴族の娘ユリアは、父親であり、母国の騎士団長でもあるヘクトルに連れられて、銀の呪いが渦巻く土地「レーエンデ」へとたどり着く。
 
その場所でユリアが出会ったのは、彼女の運命を変えることになる琥珀色の瞳を持つ寡黙な射手・トリスタンだった。

彼もまた、ヘクトルがこの地にやってきた理由、そしてユリアとの邂逅によって、自身がこれから進んでいくべき道を見いだしていく。

 

また、何よりも魅力的だったのは、本当に物語の世界に迷いこんだのではないかと錯覚するほど、繊細に描かれるレーエンデの森の情景描写。

 

空高くそびえ立つ古代樹木の桐を根城にするウル族たちの生活を彩る森の食材、そして、様々な色の緑が散りばめられた木々と、その地でたおやかに育つ植物たち。

 

実際には存在しないはずの幻想が、ひとたび目を瞑ると目の前に現れる。

 

それほど『レーエンデ国物語』という作品には、読者を惹きつけて離さない、醸成された世界観があった。

 

さらに驚くべきことに、この一冊は、これから続く「レーエンデ」をめぐる壮大な物語のほんの序章にすぎない。続きを読むのが楽しみだ。

 

では次回。