カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「麦本三歩の好きなもの 第一集/住野よる」の感想と紹介

82.麦本三歩の好きなもの 第一集/住野よる

 

もう一度味わいたかったら新たに食べるしかない。それが出来るのは今日からの自分だけだ。だって食べたいのは今の自分だから、過去の自分になんて渡してたまるもんか。(p.288)

 

麦本三歩の好きなもの 第一集 (幻冬舎文庫)
 

 

自由奔放でおっちょこちょいな図書館勤務の20代女子、麦本三歩のとりとめのない日常を描いた住野よるの短編小説。

 

が好きで、ブルボンのお菓子が好きで、ラジオが好きで、紅茶が好きな三歩が送る生活は、決して華々しい出来事が起きずとも活気に満ち溢れている。

 

三歩の日常は好きなものが縦横無尽に駆け回っていて、時には怒られ、時には失敗し落ち込むことはあれど、どこからともなく三歩のお気に入りのものたちが励ましに来て、また楽しみを見つけに行ける。

 

この作品の特徴と言えば、三歩以外の人物たちの名前が一切でてこないこと。

 

三歩が勤務する図書館の先輩たちは「優しい先輩」「怖い先輩」など、それぞれ三歩がつけた愛称で呼ばれている。

 

それなのに、それぞれの顔がありありと浮かんで見えてくるのは、きっと三歩との関わりの中での言動を見て、自然と頭の中で人柄を想像できるから。

 

三歩のような子が身近にいたなら、きっと見ていて飽きないだろうなぁ。
まぁなりたいかは別として。

 

それにしても、住野よるさんが書く文章は本当に自分の理想の文章だ。
一つ一つの言葉の表現が、登場人物たちをより一層愛おしくさせる。

 

ちなみに、ハードカバー版はBiSHモモコグミカンパニーさんが表紙になっている。

一つの三歩像としてだけども、なんだかしっくりくるなぁと思った。

 

では次回。