カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

2021-01-01から1年間の記事一覧

「錬金術師の密室/紺野天龍」の感想と紹介

113.錬金術師の密室/紺野天龍 錬金術師の密室 (ハヤカワ文庫JA) 作者:紺野 天龍 早川書房 Amazon 「錬金術」と呼ばれる力が存在する世界で、密室の中で殺された錬金術師の死の謎を解明する、紺野天龍のファンタジー×ミステリー。 いわゆる「特殊な能力が存在…

「密やかな結晶/小川洋子」の感想と紹介

112.密やかな結晶/小川洋子 記憶はただ増えるだけじゃなくて、時間をかけながら移り変わってゆくからね。(p.127) 密やかな結晶 新装版 (講談社文庫) 作者:小川洋子 講談社 Amazon 知っていたはずの物事の記憶が少しずつ消滅していく島で生きる人々の姿を描…

「眼球堂の殺人/周木律」の感想と紹介

110.眼球堂の殺人/周木律 眼球堂の殺人 ~The Book~ 堂シリーズ (講談社文庫) 作者:周木律 発売日: 2016/10/14 メディア: Kindle版 奇怪な形をした邸宅に招かれた放浪の数学者と付き添いの記者は、謎に包まれた事件に見舞われる、周木律の長編理系ミ…

「ありえないほどうるさいオルゴール店/瀧羽麻子」の感想と紹介

111.ありえないほどうるさいオルゴール店/瀧羽麻子 「でも音楽ってそういうものかもしれません。印象的な思い出の後ろで、鳴っている。反対に、その思い出を呼び起こすこともできる」(p.217) ありえないほどうるさいオルゴール店 (幻冬舎文庫) 作者:瀧羽 …

「いなくなれ、群青/河野裕」の感想と紹介

109.いなくなれ、群青/河野裕 この物語はどうしようもなく、彼女に出会った時から始まる。(p.16) いなくなれ、群青(新潮文庫) 作者:河野 裕 発売日: 2015/02/27 メディア: Kindle版 島に来た記憶を無くした主人公は、かつて離れ離れになった少女と出会っ…

「ヒッキ―ヒッキーシェイク/津原泰水」の感想と紹介

108.ヒッキ―ヒッキーシェイク/津原泰水 君たちは実際に世界を救うよ、バグだらけのヒッキーズが(p.221) ヒッキーヒッキーシェイク (ハヤカワ文庫JA) 作者:津原 泰水 発売日: 2019/06/06 メディア: Kindle版 ヒキコモリとして生活していた4人がカウンセラー…

「ぼくのメジャースプーン/辻村深月」の感想と紹介

107.ぼくのメジャースプーン/辻村深月 人間って、絶対に他人のために泣いたりできないんだって。(p.82) ぼくのメジャースプーン (講談社文庫) 作者:辻村深月 発売日: 2012/10/26 メディア: Kindle版 学校で起きた凄惨な事件によって心を閉ざしてしまった少…

「ラッシュライフ/伊坂幸太郎」の感想と紹介

105.ラッシュライフ/伊坂幸太郎 「でもな、人生については誰もがアマチュアなんだよ。そうだろ?」(p.277) ラッシュライフ (新潮文庫) 作者:伊坂幸太郎 発売日: 2012/07/01 メディア: Kindle版 主人公の異なる四つの物語が並行して語られる中、それぞれの…

「神様ゲーム/麻耶雄嵩」の感想と紹介

104.神様ゲーム/麻耶雄嵩 神様ゲーム (講談社文庫) 作者:麻耶雄嵩 発売日: 2015/10/09 メディア: Kindle版 自らを神様だと名乗る転校生の予言する通りに起こる事件に、主人公は疑心暗鬼になりながらも真実は何かを追い求める、麻耶雄嵩の「神様シリーズ」の…

「クライマーズ・ハイ/横山秀夫」の感想と紹介

103.クライマーズ・ハイ/横山秀夫 クライマーズ・ハイ (文春文庫) 作者:横山 秀夫 発売日: 2012/09/20 メディア: Kindle版 1985年に起きた未曽有の航空機墜落事故の裏側で、錯綜する情報と報道の意義に揺さぶられながらも、報道現場に立ち続ける新聞記者であ…

「神様のビオトープ/凪良ゆう」の感想と紹介

102.神様のビオトープ/凪良ゆう もともと幸福にも不幸にも、決まった形などないのだから。(p.285) 神さまのビオトープ (講談社タイガ) 作者:凪良ゆう 発売日: 2017/04/20 メディア: Kindle版 亡くなった夫の幽霊と一緒に暮らす主人公と、歪な愛を携えなが…

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?/フィリップ・K・ディック」の感想と紹介

101.アンドロイドは電気羊の夢を見るか?/フィリップ・K・ディック アンドロイドは電気羊の夢を見るか? 作者:フィリップ・K・ディック,浅倉 久志 発売日: 2012/08/01 メディア: Kindle版 最終世界大戦後に放射能灰に汚染された地球でアンドロイド狩りを行…

「十二国記 月の影 影の海/小野不由美」の感想と紹介

100.十二国記 月の影 影の海/小野不由美 「裏切られてもいいんだ。裏切った相手が卑怯になるだけで、わたしの何が傷つくわけでもない。裏切って卑怯者になるよりずっといい」(下 p.84) 月の影 影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫) 作者:小野 不由美 発売日:…

「夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦」の感想と紹介

99.夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦 私はその苦闘を「ナカメ作戦」と名付けた。これは、「なるべく彼女の目にとまる作戦」を省略したものである。(p.156) 夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫) 作者:森見 登美彦 発売日: 2012/09/01 メディア: Kindle版 京都を舞台…

「天地明察/冲方丁」の感想と紹介

98.天地明察/冲方丁 星は答えない。決して拒みもしない。それは天地の始まりから宙にあって、ただ何者かによって解かれるのを待ち続ける、天意と言う名の設問であった。(p.219) 天地明察(特別合本版) (角川文庫) 作者:冲方 丁 発売日: 2014/06/20 メディ…

「風が強く吹いている/三浦しをん」の感想と紹介

97.風が強く吹いている/三浦しをん 「走るの好きか?」(p.16) 風が強く吹いている (新潮文庫) 作者:しをん, 三浦 発売日: 2009/06/27 メディア: 文庫 走るのを辞めなかった二人の少年が、陸上とは無縁の大学寮に住む住人たちと箱根駅伝を目指す、三浦しを…

「阪急電車/有川浩」の感想と紹介

96.阪急電車/有川浩 人数分の物語を乗せて、電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。(p.130) 阪急電車 (幻冬舎文庫) 作者:有川 浩 発売日: 2010/08/05 メディア: 文庫 関西にまたがって走る私鉄「阪急電車」に乗り合わせた乗客たちのもとに起こるさ…

「和菓子のアン/坂木司」の感想と紹介

95.和菓子のアン/坂木司 和菓子は自由でおいしくて、人生に色を添える。(p.301) 和菓子のアン (光文社文庫) 作者:坂木 司 発売日: 2012/12/21 メディア: Kindle版 デパートの地下にある和菓子屋で働く主人公の女の子が、個性豊かな従業員たちに囲まれながら…

「疾走/重松清」の感想と紹介

94.疾走/重松清 ひとりぼっちが二人になれば、それはもうひとりぼっちではないのです(下 p.239) 疾走【上下 合本版】 (角川文庫) 作者:重松 清 発売日: 2016/09/24 メディア: Kindle版 広大な干拓地を有する町で暮らしていた中学生の主人公は、兄が犯した…

「ユージニア/恩田陸」の感想と紹介

93.ユージニア/恩田陸 新しい季節は、いつだって雨が連れてくる。(p.10) ユージニア (角川文庫) 作者:恩田 陸 発売日: 2008/08/25 メディア: 文庫 様々な関係者への聞き込みをもとに、数十年前に起きた名家の大量毒殺事件の真実を紐解いていく、恩田陸の長…

「プシュケの涙/柴村仁」の感想と紹介

92.プシュケの涙/柴村仁 翅を片方失った蝶は地に落ちるしかない涙を流す理由もない私は失った半身を求めて彷徨うだけ プシュケの涙 (講談社文庫) 作者:柴村仁 発売日: 2014/11/14 メディア: Kindle版 自殺した少女の謎を解き明かす、柴村仁の青春ミステリー…

「オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎」の感想と紹介

91.オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎 「未来は神様のレシピで決まる」(p.38) オーデュボンの祈り(新潮文庫) 作者:伊坂幸太郎 発売日: 2012/07/01 メディア: Kindle版 変てこな人々ばかりが住む島で起こる魔訶不思議な事件を描いた、伊坂幸太郎のデビュー作…

「透明カメレオン/道尾秀介」の感想と紹介

90.透明カメレオン/道尾秀介 たとえ目に見えない透明な世界だったとしても、本気で願えば、人はそれに触れることができる。(p.429) 透明カメレオン (角川文庫) 作者:道尾 秀介 発売日: 2018/01/25 メディア: Kindle版 バーに集まる仲間たちとの出来事を作…

「ファーストラヴ/島本理生」の感想と紹介

89.ファーストラヴ/島本理生 なぜなら「今」は、今の中だけじゃなく、過去の中にあるものだから。(p.260) ファーストラヴ (文春文庫) 作者:島本 理生 発売日: 2020/02/05 メディア: Kindle版 父親殺害の容疑で逮捕された女子大生の動機を探るため、臨床心…

「そして、バトンは渡された/瀬尾まいこ」の感想と紹介

88.そして、バトンは渡された/瀬尾まいこ 「そう、自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくるんだって。親になるって、未来が二倍以上になることだよって」(p.315) そして、バトンは渡された (文春文庫) 作者:瀬尾 まいこ …

「罪の声/塩田武士」の感想と紹介

87.罪の声/塩田武士 俺らの仕事は素因数分解みたいなもんや。何ぼしんどうても、正面にある不幸や悲しみから目を逸らさんと『なぜ』という想いで割り続けなあかん。(p.523) 罪の声 (講談社文庫) 作者:塩田 武士 発売日: 2019/05/15 メディア: 文庫 日本中…

「偉大なるしゅららぼん/万城目学」の感想と紹介

86.偉大なるしゅららぼん/万城目学 「しゅららぼん、だな」(p.380) 偉大なる、しゅららぼん (集英社文庫) 作者:万城目 学 発売日: 2013/12/13 メディア: 文庫 滋賀の地で琵琶湖から特殊な力を授かった「湖の民」である日出本家と、同じく特殊な力を持つ棗…

「この本を盗む者は/深緑野分」の感想と紹介

85.この本を盗む者は/深緑野分 ああ、読まなければよかった!これだから本は嫌いなのに!(p.41) この本を盗む者は 作者:深緑 野分 発売日: 2020/10/08 メディア: 単行本 本の街である読長町を舞台に、本の蒐集家であった祖父が建てた御倉館で起こる不思議…

「52ヘルツのクジラたち/町田そのこ」の感想と紹介

84.52ヘルツのクジラたち 孤独の匂いは肌でも肉でもなく、心に滲みつくものなのだ 。(p.51) 52ヘルツのクジラたち 作者:町田そのこ 発売日: 2020/04/21 メディア: Kindle版 家族との軋轢によって人生を狂わされ、誰も知らない場所に移り住むことになった女…

「儚い羊たちの祝宴/米澤穂信」の感想と紹介

83.儚い羊たちの祝宴/米澤穂信 バベルの会とは、幻想と現実とを混乱してしまう儚い者たちの聖域なのです。(p.288) 儚い羊たちの祝宴(新潮文庫) 作者:米澤 穂信 発売日: 2014/11/28 メディア: Kindle版 夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会…